Vol.1570:CRS(共通報告基準)の嘘と本当

〇この記事を読むのに必要な時間は約4分です。

埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Beograd Consulting Group 
代表取締役CEO

銀行秘密法時代

各国の税務機関の取り組みと
匿名性との歴史を少し語らさせて頂くと

2000年代前半までは
富裕層達にとっては、まさに『脱税天国』
言うような時代でもありました。

この時代、なぜ『脱税天国』になっていたのか?
と言えば、スイスやリヒテンシュタインなどの
タックスヘイブンには
『銀行秘密法』と言う法律が存在をしていたからです。

これが、どんな法律か?と言うと

銀行はいかなる理由があったとしても
顧客の情報を開示してはならない!


と言う法律です。

この『いかなる理由』と言うのは
テロリストや犯罪者であったとしても
顧客情報は開示されず『銀行秘密法』と言う
法律によって、守られていました。

しかも、この時代の銀行は
『ダミーアカウント』と言うアカウントが
認められていました。

ダミーアカウントは、簡単に言えば
口座名義を自由に決めれる口座のことで
例えば、本人の名前が田中であったとしても
口座名義は『マイケルジャクソン』でもOKなわけです。

ダミーアカウントの存在が
もはや『マネーロンダリング』と言う世界線ですが
それらが、全て法律で許されていたのが
2000年代前半だったわけです。

すごい時代ですね。

租税条約時代

しかし、この銀行秘密法も
2001年のアメリカ同時多発テロをキッカケに
大きく潮目が変わり出します。

当時、テロリスト達のお金は
スイスの銀行にあったと言われていますが
『銀行秘密法』によって守られており
それに対して、アメリカ政府は怒りまくるわけです。

『テロリストのお金すら守られてしまう
銀行秘密法はどうなんだ??』
と。

そのことをキッカケに
世界中で銀行秘密法が問題視されだし
各国で銀行秘密法が撤廃され

2010年頃には、もう世界中から
銀行秘密法が撤廃されていました。

そこからは『租税条約』の時代です。

各国の機関によって、要請があれば
銀行の顧客情報が開示されると言う時代に
入ってくるわけです。

ただ、この租税条約には欠点もありました。

租税条約は『要請をすれば、銀行が何でもかんでも情報を出す』
と言う物ではなく

情報を出してもらうためには
『裁判所の令状』が必要だったわけです。

脱税をしている人がいたとして
その脱税をしている証拠を集め
それがA銀行にあるから、情報開示を求める。

みたいなことをしないと、情報は出なかったわけです。

つまり
『田中さん、なんか怪しいからA銀行さん
情報開示してね』

みたいな、ノリでは情報開示はされないわけです。

そうなると、難しいのが
そもそもの証拠が『銀行の履歴』だったりするので
租税条約だけでは、完全に脱税をしている人を
補足することができなかったわけです。

CRS(共通報告基準)時代

そこで、登場したのが
『CRS(共通報告基準)』です。

CRSでは、裁判所の令状は不要で
年に1回、非居住者の口座情報が自動で送られる仕組みです。

送られる情報は

・名前
・税金番号
・住所
・口座残高
・1年間で受け取った金利(定期預金などの)の額


です。
ちなみに、口座の履歴は送られません。

また、CRSに加盟をしたからと言って
何でもかんでも情報がシェアされるわけではなく
各国で対応がまちまちです。

その各国の対応方法は
実はネット上で(2025年1月9日現在)確認が
取れます。

参照:OECDより



CRSに入っているとなっていても
実は情報を送っていない国もあるのが
今のCRSの仕組みです。

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